人事システムのM&A
人事システム企業のM&Aの手法について
人事システムでは氏名、性別、家族情報といった基本的な情報に加え、入社年次や昇格・異動など社内に関する情報を管理します。パッケージ化されるようになり、現在ではクラウドで提供されることが多くなっています。それに加え、給与計算や勤怠管理などのシステムと統合され、ERP(統合業務システム)に含まれることも多くなっています。
また、マイナンバー制度執行により、今後は人事システムの需要が増大すると思われます。
以前は人事システムは小規模な事務所や店舗、工場では導入が進んでいませんでした。Excelによる手作業などで、従業員情報を十分管理していたようです。実際に2013年の矢野経済研究所の調査では、日本の民間企業及び地方自治体617社のうち、人事システムの導入率は、自社開発のもので利用率9.7%、パッケージ型のもので1.9%であり、営業支援システムや生産管理システムに比べ、著しく低い数値になっています。
ただ、状況は2015年10月以降、マイナンバー制度によって急変したと思われます。マイナンバーは国民全員に配布される個人番号です。あらゆる企業は従業員のマイナンバーを収集し、廃棄するまで厳重に管理する必要があります。そこで、マイナンバーを登録しているシステムのセキュリティ機能がより一層強化する必要ができています。上記の管理をExcelでするのは困難だと思われます。最新の人事システムでは、アクセス権限の強化などセキュリティ面が十分なものになっています。
人事システムの企業をM&Aするときの選定手法
以下で人事システム企業をM&Aの手法のポイントを3点述べます。
POINT1 企業規模に対応している人事システム会社を選択する
自社の規模によって導入する人事システムの仕様は大きく変わってきます。人事システムは簡易なものから大型システムまで数多く存在します。
中規模以上の会社にはパッケージ型が多く導入されています。例えば鈴与シンワート株式会社が提供している『S-PORT Cloud Bシリーズ』は250人以上の中規模以上の企業向けとなっています。この商品では、通常の機能に加えて、人事諸届・年末調整・就業申請など豊富な多様な機能を備えています。
中小企業などでシステム運用管理者がいない場合はクラウド型がオススメです。『Web人事考課システム モノドン』はクラウド型の人事システムを展開しており、パッケージ型よりも廉価になっているようです。会社規模を考慮したうえで、人事システム企業のM&Aを検討すべきです。
POINT2 企業の事業や戦略に合致した人事システム会社を選択する
企業は様々な目的で人事システムを導入することを検討しています。現在はマイナンバー制度への対応の理由が挙げられますが、以前は以下の3つが主な理由だと思われます。
■グローバル化への対応
グローバル化は規模に関わらず、日本企業の共通する課題となっています。海外へ進出したり、海外からの人材受け入れたりすることがより一層必要になります。人事システムにおいては多言語対応は望まれる機能かと思われます。
■人事部門の業務効率化
人事部門の主な役割には、従業員情報、所属、採用、退職、異動、出向、人材育成、配置、処遇、評価や人事考課などの管理が挙げられます。それらの情報をExcelなどで管理するのには限界があり、確実に管理するためには人事システムが必要です。特に採用や異動の時期に人事部門の業務量が激増しますが、負担軽減できます。
■適切な人材配置をするため
企業にとって経営戦略に基づき、適材適所に人材配置することは大きな課題です。人事考課等の情報を参考にしますが、評価軸が多い場合その管理は困難になります。人事システムには評価やスキルなどの情報がデータで蓄積されているので、特定の条件で容易に人材を抽出できます。なので、経営層が人材を活用するという視点からも、人事システムは大切です。
POINT3 セキュリティ機能は充実しているか
大切な情報を扱うシステムだからこそ、セキュリティ機能を重視する必要があります。人事システムが扱う社員の情報には、漏洩や改ざんが絶対あってはなりません。そのため、どのようなセキュリティ機能が施されているかも重要なポイントになります。特にマイナンバー制度施行により、企業は社員のマイナンバーを管理するようになったため、より一層セキュリティ機能は人事システム企業のM&Aの際には、買い手・売り手共に重視しているかと思います。実際に、株式会社アグレックスが提供する人事システム「Dr.人事Expert」では、別データベース管理・データ暗号化・ログ監視等を標準装備するなど、セキュリティ面をより一層強化しています。人事システム企業のM&Aの際には、事前に問い合わせるなどして、セキュリティ面は必ず一定水準以上の機能を選ぶべきです。
以上で人事システム企業のM&Aの選定ポイントを見てきました。マイナンバー制度だけでなく、今後の法改正の際、自社で機能をカスタマイズできれば、迅速に対応することができます。また、同規模の企業や同業種などに対してのビジネスチャンスにもなりえるかもしれません。